また近年、Instagram等のSNSで「映え」ると若い世代に人気なのが「火鍋」。中国の鍋料理で、熱々のスープに具材を入れてしゃぶしゃぶのように食べる。白い「白湯スープ」と赤い「麻辣スープ」の2種類が用意され、2つのスープが混じらないよう中を仕切った専用鍋を用いる。高田馬場にも多く出店しているが、中国人向けの辛い火鍋を出す店もある。

 また、最近急速にお店が増えているのが「麻辣湯」。四川省発祥と言われるピリ辛のスープで、春雨や野菜など好きな具材をチョイスできる。お昼時になるとランチで訪れる会社員も多いようだ。

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 ほか、近年中国本土で急速に増えているという「COTTI COFFEE(コッティコーヒー)」も、2023年に高田馬場店がオープンしている。

 高田馬場駅前で地域密着型の不動産業を営む男性は、中国人経営の店舗は今後も増えると予想する。

「表通りに面した元飲食店の居抜き物件でさえ、家賃は70万~80万円。契約時には敷金、礼金とは別に家賃10カ月の保証金が必要ですが、ほとんどの場合、即日、日本円の現金払いです。身元もはっきりしているし、家賃を値切ったり、支払いが滞ることもない」

 そう言った上で、男性は私の耳元でこうささやいた。

「競合したら中国人経営者を選びます。金払いがいいんです」

「留学生30万人計画」の追い風

 なぜ中国人は高田馬場を目指すのか――。

 高田馬場は中国人に人気の高い名門・早稲田大学に隣接するターミナル駅で、中国人留学生のための日本語学校、有名大学を目指す進学塾がひしめいている。今や“早稲田ブランド”は超難関の東京大学や京都大学を凌ぐ人気だ。早稲田大学は、2000年代初頭の早い段階から留学生獲得に動いた。日本は長期的にみると少子化のあおりを受け受験生が減少することが目に見えていたからだ。

 そこで、目をつけたのが好景気の影響で富裕層が急増し、日本とも距離が近い中国だった。2008年、文部科学省が発表した「留学生30万人計画(2020年を目標)」も追い風となった。その結果、最新の2018年の留学生総数は約29万9000人にまで到達。その4割を中国人が占める。しかも、その留学生像は、従来の日本人の先入観とはかけ離れていて驚くばかりだ。

「中国人留学生は改革開放の恩恵を受け、同時に『独生子女(一人っ子政策)』で生まれた子どもたちです。だから、中流以上の家庭であれば、子どもを国外の私立大学に留学させ、毎月、家賃と生活費程度の仕送りをする経済的余裕があります。一人っ子なので、両親以外に祖父母、親戚からも援助が期待できる。中には、学生の身分でありながら、学費とは別に、親のお金で東京の一等地に投資用のタワマンを購入する超富裕層もいます。上を見たらきりがありません」。前述の男性はこう語った。

中国人による中国人のための中国食堂

 こうした中国人留学生相手の店は、昨今、「ガチ中華」と呼ばれている。それは日本人が知る「中華料理」でも「町中華」でもない。

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