チームカラーは毎年変わる

 高校野球の強豪校は、監督の影響力が強い学校ほど毎年同じようなカラーのチームになるという。常勝を目指すと自然とそうなるのだろう。

 だが、森林監督にチームを「染める」という考えはない。そして、慶應高校野球部には、代替わりすれば前の代の反省をもとに方向性を大きく変えるという伝統がある。

 そんな森林監督の方針と野球部の伝統は、実質チームをまとめる主将にはかなり厳しいものだ。2019年に主将を務めた善波力氏は「自分たちの色を出すことに囚われたかもしれない」と反省を口にし、その翌年に主将となった本間颯太朗氏は、前年のゆるい空気を一掃しようとした結果「厳しくしすぎて慶應の良さを潰してしまった」と後に気づいたという。

 もっとも、その反省も森林監督が彼らにまかせて、徹底的に考え抜かせたからこそ。彼らはその後の大学野球や社会人生活の中で、高校時代に主将を務めた経験を活かして活躍している。

「真似できない」で終わらせるのはもったいない

 プロセス重視で「まかせる」ことを重視する森林監督のやり方はとても真似できないと思う人もいるだろう。しかし、2023年夏の甲子園で慶應高校と決勝を戦った仙台育英高校の須江監督は以下のように語っている。

『慶應だからできるんだ』『ウチにはできない』と言ってしまうのは、もったいないと思うんです。(中略)慶應さんの良さからエッセンスをいただいて、自分のチームに必要なものを落とし込んでいけばいい

 名門・仙台育英の監督が言うように、そのまま真似する必要はなく、自分やチームに必要なものを取り入れていくことは、それほどハードルが高くないかもしれない。