経済力が長生きの質を決める時代に

 ちなみに私は、「いざ」というときのために一定額をすぐに引き出せる預金として準備しており、家族にもその情報を伝えてあります。

「いざ」の内容によって、その金額で十分足りることもあれば、全然足りないこともあるでしょう。それでも、ある金額で線引きをして、「何か問題が起こったらこの範囲でQOLを下げない生活ができるようにしよう」と考えておくと、少しだけ気持ちが楽になるような気がします。

 優先順位は決まったけれども、健康維持にそれほどお金を使えない人は、優先順位の高い順に日常生活でどのようなケアができるかを考えましょう。何といっても、今の時代に生きる人は長生きをするのは避けられないのです。目、耳、歯、膝と腰についてはできるだけ長くその機能を維持するほうがQOLは圧倒的に高くなります。

「嫌なことを言わないでほしい」と思われるかもしれませんが、これからは経済力が長生きの質を決める可能性もあることを知っておいたほうがいいと思います。(続く)

奥真也(おく・しんや)
1962年大阪府生まれ。医療未来学者。医師、医学博士。大阪府立北野高校を経て、東京大学医学部医学科卒。英レスター大学経営大学院卒。専門は医療未来学、放射線医学、核医学、医療情報学。東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター准教授、会津大学教授を経てビジネスの世界へ。
著書に『Die革命─医療完成時代の生き方』(大和書房)、『未来の医療年表─10年後の病気と健康のこと』(講談社現代新書)、『未来の医療で働くあなたへ』(河出書房新社)、『人は死ねない─超長寿時代に向けた20の視点』(晶文社)がある。