「マイQOL」を左右する4つの機能
人間拡張とは、テクノロジーによって人間の能力を身体、知覚、認知、存在の4方向に拡張していこうとする概念で、関連する技術として仮想現実(Virtual Reality =VR)や拡張現実(Augmented Reality =AR)などがあります。
2021年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで外出や移動が難しい人たちがロボットをアバター(分身)として使うことで、実際のカフェで従業員として働くことが実現しました。
臓器を機械の部品のように交換できる「人工臓器」の実現も遠い未来の話ではないかもしれません。現在、すでに人工水晶体(眼内レンズ)、心臓の人工弁、皮膚シートや心筋シートといった人工臓器が実現しています。今後は腎臓、肝臓、血管など難易度の高い臓器に研究の重点がシフトしていくでしょう。
人工臓器の技術が完成すれば、傷んだ臓器をそっくり取り替えて、自分のしたいことをして最後まで生きることができる未来がやってくると思われます。
このように、近い将来実現するかもしれない高額医療や最先端テクノロジーをどこまで自分の健康やQOL維持のツールに含めるか。私たちはそれを吟味し、それに合わせてお金を準備することが必要になります。
お金を準備するためには「いくら貯めるか」の目安があったほうがいいでしょう。それを知るために、まずは自分にとって大切なQOL、「マイQOL」が何なのかを把握することをおすすめします。
QOLを大きく左右する要素は人によってさまざまですが、私は医師の立場から「目」「耳」「歯」「膝と腰」に着目しています。年齢を重ねても、この4つの機能をできるだけ維持することがQOLを下げない生き方につながると考えているからです。
お金のことは気にせず、自分の納得のいく選択肢を選べるならそれに越したことはありません。しかし、多くの人は健康維持のために使えるお金には限りがあります。
そのとき、人生において自分の譲れないものは何か、逆に譲れないものを実現するために何ならあきらめていいと思えるのかを知っていなければ、何にどれくらいお金をかけていいかがわかりません。自分の優先順位を知って、その順番にお金を使えるようになりましょう。
優先順位を把握するための「『マイQOL』を評価するワークシート」を用意しました。死ぬまで大事にしたい順にA~Dを1~4位と順位づけしてみましょう。
考える上で注意していただきたいのが、「健康な状態で一番失いたくない機能」と「健康が損なわれても最期まで一番残したい機能」とは違うかもしれない、ということです。