(白鳥浩:法政大学大学院 教授)
「青木の法則」とは何か?
岸田政権の支持率は、調査するメディアによっては10%台となっており、その政権運営、いやその政権の存続自体が危ぶまれてきている。そうした支持率が低下した政権について、日本の政治でしばしばものさしとして用いられるのが、「青木の法則」である。
この記事の目的は、現在の支持率の低下に悩む岸田政権と、この「青木の法則」の令和期の日本政治への示唆について検討するものである。
それでは「青木の法則」とはいったい何であろうか。政治学の中には、「小選挙区制は二大政党制を、比例代表制は多党制を招来する」ということを述べた「デュベルジェの法則」のように、多くの法則が提示され、示唆されているところがある。
「青木の法則」とは、政権の安定性に関する指標であり、非常に老練な政治家で小渕内閣において内閣官房長官を務めた青木幹雄氏が提唱したものである。
この「青木の法則」は、青木氏の経験則によるところが大きく、必ずしも科学的な根拠があるというものではない。しかしながら、政権を動かしてきた経験豊かな政治家のその洞察には、一聴に値する示唆が含まれているといえる。
「青木の法則」には、「青木率」による「政権の安定性」にまつわる第一法則と、「国政選挙における与党第一党の獲得議席の予測」にまつわる第二法則があるわけだが、ここでは前者の「青木の法則」に絞ってその示唆を考察するものである。