- 7月13日、ペンシルベニア州の選挙集会でトランプ前大統領が銃撃されるという事件が起きた。
- 幸い、トランプ氏は軽傷で済んだが、過去に暗殺された要人は少なくない。
- 要人暗殺を防ぐテクノロジーの最前線を追った。
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
トランプ前大統領を襲った凶弾
2024年7月13日、ペンシルベニア州の選挙集会でドナルド・トランプ前大統領が銃撃を受け、軽傷を負った。容疑者は20歳の男で、会場から約120メートル離れた倉庫の屋上から、ライフル銃を使ってトランプ前大統領を狙撃。警備にあたっていたシークレットサービスのスナイパーにより、その場で容疑者は射殺された。
この事件で一般人1名が死亡、2名が重傷を負った。トランプ前大統領は病院で手当てを受けた後、予定通り共和党全国大会への出席を表明。バイデン大統領は事件を非難し、国民の団結を呼びかけた。
この事件を受け、選挙期間中の政治的暴力への懸念が高まっている。シークレットサービスの警備体制にも疑問が投げかけられており、今後、議会や独立機関による調査が予定されている。
米国では銃規制が緩いこともあり(今回のトランプ元大統領暗殺未遂事件でも、使用されたAR-15ライフル銃は容疑者の父親が合法的に購入したものだった)、襲撃に使用する武器が簡単に手に入りやすい状況にある。特に今回はライフル銃が使用されたことで、演説会場から100メートル以上離れた場所からの狙撃が可能になってしまっていた。
犯人が侵入した倉庫はシークレットサービスの警備範囲外で、地元警察に警備を任せていたが、きちんと連携が取れていなかったようだ。ならばシークレットサービスの数を増やせということになるが、今回は大統領選挙の年ということで、現職大統領と候補者を同時に警護する必要があり、人員が不足しがちだったという背景も指摘されている。
また、単純に警備を強化できない理由もある。警備範囲を広げすぎたり、警備内容を厳しくしすぎたりすると、政治家が参加するイベントの運営に支障をきたすことになる。特に今回は演説集会ということで、過度に参加者を制限したり、地元住民に負担をかけたりするような形になっていたら、政治活動の妨害だと批判されていた恐れもある。
さらに、過剰な警備を「臆病者と思われかねない」と敬遠する政治家もいる。安全性と利便性、そして政治的意図に配慮し、バランスを取らなければならないわけだ。
広大で複雑な市街地環境において、潜在的な狙撃の脅威を事前に察知することは容易ではない。そのため、最新のテクノロジーを活用した効果的な検知・防御システムの開発と導入が取り組まれている。いくつかの例を見ていくことにしよう。