石丸氏に吹いた「風」を組織として感知できない

 石丸氏はSNSなどのネット戦略を駆使し、無党派、特に若者層の取り込みで強みを発揮した。動画投稿サイト「ユーチューブ」などを介して支援を広げ、人気をリアルにつなげるために街頭演説は17日間で228回行った。

石丸氏のYouTube公式チャンネルより

 こうした活動が功を奏し、朝日新聞社が投開票日に実施した出口調査では、無党派層の36%が石丸氏を支持し、32%の小池氏を上回った。16%の蓮舫氏にはダブルスコア以上の差をつけた。

 日本テレビと読売新聞の出口調査でも、10代、20代では小池氏と蓮舫氏を足しても及ばないほどの大差をつけ、30代も石丸氏がトップだった。石丸氏の得票は、有権者の投票率アップにもつながったとみるのが自然だろう。

 では、選挙期間中を通して、メディアは石丸氏が票を伸ばしていることに気づかず、最終的な結果を予測できなかったのか。

 ここからは過去に選挙報道に携わった立場からの推察である。

 まず、石丸氏を取材する担当記者は各社とも置いているはずである。ただし、現職の小池氏を都知事選取材の中心を担う記者が担当し、2番手の記者が蓮舫氏、3、4番手の記者が石丸氏を取材するというのが配置の流れになる。

 社内でどの担当記者の声が最も“大きい”か。石丸氏を担当している記者が、街頭演説などで、石丸氏に吹く「風」を感じ取っても、組織として形が見えない無党派層は票読みにおける裏付けが難しい。こうした中で、石丸氏の動向をどれだけマスメディアの社内で共有できていたかは疑問符が付く。

 石丸氏支持が他候補を上回った層は10代~30代で、新聞を読まなくなった年代とも合致する。

 石丸氏が選挙戦を振り返った際の会見を見ていると、既存メディアに対して挑発的な言動が目立ち、生中継で質問をぶつけたテレビ各局のアナウンサーやゲストらと質疑がかみ合わない場面もあった。こうした態度に嫌悪感を抱く人がいるだろうが、それは新聞読者層に多いのではないか。