米国議員に最高年齢制限を設けるには憲法改正が必要

 バイデン氏の年齢を「懸念している」人は76%だったのに対し、トランプ氏は38%だった。過去のギャラップの世論調査でも80歳以上の大統領候補に投票する意思のある米国人は31%、70歳以上の候補に投票する意思のある米国人は63%という同じような傾向が出ている。

 米ピュー研究所が昨年10月に発表した調査では、米国民の79%が議員の最高年齢制限に賛成だった。共和党員や共和党寄りの無党派層は議員の定年制を支持する傾向が強く、82%に達していた。民主党員や民主党寄りの無党派層では76%だった。

 米国憲法は大統領と上院・下院議員について最低年齢を定めているが、最高年齢は定めていない。議員に最高年齢制限を設けるためにはおそらく憲法を改正する必要がある。憲法改正には上下両院の3分の2以上の賛成と4分の3以上の州の批准が必要で、ハードルは極めて高い。

 米コロラド大学のデイモン・ロバーツ氏とミシガン州立大学のジェニファー・ウォラック氏によると、高齢議員は若手議員よりも仕事ぶりに対する有権者の評価が悪かった。それでも米国議会が若返る可能性は低いという。

 もちろん社会全体の高齢化が背景にある。しかし英国では同じ能力ならベテランより若手を選ぶ傾向がみられる。現職議員の優位性や党幹部が候補者をリクルートする方法など、高齢の政治家に有利な米国の構造的要因が、高齢政治家が選挙で勝ち残り、増殖する理由になっているという。

 米紙ニューヨーク・タイムズの社説(6月28日)は「祖国のためにバイデン大統領はレースから身を引くべきだ」と唱えた。トランプ氏に勝つのが自分の使命だと信じて疑わないバイデン氏を説得できるのは最愛のファーストレディ、ジル夫人だけだろう。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。