(立花 志音:在韓ライター)
6月12日、朝8時26分だった。その日は学校に行く娘を送るため、たまたまマンションから大通りに通じる道まで出ていた。マンションの棟と棟の間を歩いている時、一瞬、突風がマンションのガラス前面にバンっと当たったような振動がしたが、風は吹いていなかった。次の瞬間、「ビービービー」と携帯電話の緊急事態速報が鳴り響いた。地震だったのだ。
震源は韓国の南西部、全羅北道扶安郡で、震度はマグニチュード4.8と発表された。この地方でマグニチュード4以上の地震が観測されたのは初めてで、その後の余震も17回記録されている。地震の原因は断層のずれで、震源が深さ8kmと浅かったために、体感震度が大きかった様子だ。
普段地震のないと思われている韓国でも、ときどき釜山などでは断層のずれによる地震が起こる。慣れていないので、少しの地震でも基本的にパニックになる人が多い。
実は筆者は、東日本大震災を夫と長男と共に経験している。東京に住み始めた時、夫に「大きな地震が起こったら絶対に帰ってきてはダメ」と真っ先に教えた。夫の勤め先が横浜だったからである。
そして、3年後に地震が起こったわけであるが、夫は全くその言葉を覚えていなかったという。当日はどっちにしろ帰宅難民になりかけたので、職場に泊まって翌日の勤務を早退して帰ってきた。
韓国映画「海雲台(邦題はツナミ)」では、釜山沖で起きた地震の影響による津波で、釜山が大津波に飲まれるスペクタクルなシーンが現れるが、現実的にそんなことは起こりえない。
そもそも韓半島にそんな津波が起こった場合、日本列島はどうなっているんだというツッコミは、時間の無駄以外の何ものでもない。
今回の地震では震源付近だけでなく、かなり広い地域で揺れが観測された。しかも、安全だと思われていた地域で起こった地震だったので、注目度も高く韓国全土で報道された。
ただ、筆者がネット上で見たものは、全羅道で起こった地震を心配するふりをして、自分たちに迷惑がかからないことを願う、全羅道以外に住む韓国人の本音だった。