バルセロナで深刻化していた民泊問題

 バルセロナでの民泊問題はすでに数年前から顕著になっていた。2021年夏には、認可を受けた物件を丸ごと貸し出すことはできても、一部の部屋だけを短期で貸し出すことが禁じられた。

 当時この件を詳報した米ニューヨーク・タイムズ紙は、バルセロナにエアビーが出始めた2009年には、バルセロナには民泊に対する明確な規制はなく、「グレー・マーケット」で展開されていたと記している。その後、騒音や騒動を起こし続ける観光客の急増に地域住民の不満は高まり、観光客に反発する市民が増えていったという。

「観光客は帰れ!」とプラカードを掲げるバルセロナでのデモ=6月19日(写真:ロイター/アフロ)

 2015年、住宅問題に積極的に取り組んできたコラウ氏が市長に選出された。同紙によると、コラウ前市長は新規の住宅貸し認可にモラトリアムを設け、違法な民泊を徹底して取り締まるなど、短期滞在型の宿泊施設運営に本格的なメスを入れた。それでもすでに認可済みであった1万余りの住宅貸しを廃止することは法的にできず、やむなく部屋貸しを禁じるにとどまった。

 観光以外にこれといった産業に乏しい地域では、観光がもたらす経済的な恩恵は欠かせないものだ。デモに参加する人たちは口々に、問題は観光客そのものではなく、持続可能性を欠くビジネスモデルにあると話している。

 一方、オーバーツーリズムに苦しむ人たちの切実な声とは裏腹に、抗議活動を「スペイン発観光戦争勃発」などと煽り、スペインへの観光をボイコットしようという動きまで出た国がある。スペインへの観光客が最も多い、英国だ。