有人宇宙ステーションは、1990年代に、中国が国際宇宙ステーション計画に参加させてもらえなかったことで、独自の道を歩み始めた。2011年9月に、「天宮1号」を発射。「神舟8号」「神舟9号」「神舟10号」とのドッキングに、順次成功していった。そこから、3人の宇宙飛行士が約半年間、滞在するスタイルを確立していったのだ。

 中国の有人宇宙ステーションは、「天和核心船」「夢天実験船」「問天実験船」「有人飛行船『神舟』」「貨物輸送船」がドッキングしてなっている。今年4月には、「神舟18号」の発射に成功した。

 火星探索計画は、2016年に始動した。2020年7月に、火星探査機「天問1号」を発射。翌2021年5月に、「天問1号」から火星探索車「祝融号」を火星に着陸させ、探査を行った。

中国が月面探査に込めた狙い

 翻って、今回の月面探査である。私はいまから5年以上前に、月面探査計画に詳しい中国の科学者から、話を聞いたことがある。その科学者は、「2つの利権」と「2つの備え」がキーワードだと語っていた。

「月に関して中国が目指す『2つの利権』とは、中国人の居住権と資源採掘権だ。2030年代までに、これらを確立していく。

 また『2つの備え』とは、今世紀中頃から後半にかけて展開される可能性がある『アメリカとの最終戦争』及び『AI(人工知能)との戦争』に備えるということだ。わが国が月の裏側を目指しているのは、地球上からアメリカもしくはAIがどんな攻撃を仕掛けてきても、耐えられるようにという意味なのだ」

 その科学者は、会食の席で半ば冗談めかして言っていたので、もしかしたら冗談だったのかもしれない。でも少しは本気だったかもしれない。