なぜアクティビストの株主提案が通るようになったのか

 2025年に設立150年を迎える名門企業・東芝は、昨年秋、上場廃止に追い込まれた。それもアクティビストの猛攻に耐えかねた結果、その対応に追われるより非上場企業になることを選択したためだ。

 断っておくが、総会屋とアクティビストを同列に論じているわけではない。総会屋の場合、経営層個人の金銭や恋愛スキャンダルなどをネタに総会を荒らすことが多かった。一方、アクティビストは、企業が利益を最大化し、その利益を株主に還元するための提案を行う。総会屋が自分たちのみの利益を追求したのに対し、アクティビストは株主全体の利益を追求する。

 特に日本はバブル崩壊後の低成長が続き、さらにはコロナ禍も加わって企業の生産性が欧米企業に比べて遅れをとっている。そのため、企業の解散価値より時価総額が低いPBR(株価純資産倍率)1倍未満の企業が、昨年の段階で上場企業の半数を占めるまでになった。

 これは裏を返せば、「まっとうな経営」さえすれば、株価が上昇するということだ。アクティビストが目をつけるのはこういう会社で、経営にメスを入れることで企業価値を上げようと、株主提案などにより企業に経営改善を要求する。企業にとってはありがたい提案のようにも思える。

 ただし、企業とアクティビストでは視点が異なる。アクティビストが短期的利益を求めて即効性のある施策を要求するのに対し、企業側は10年、20年先を見据えて成長戦略を描く。そこで大半の場合、企業側はアクティビストの提案に反対する。

 アクティビストは株主だが、その持ち株比率は多くても10%程度の少数株主だ。そのため、これまでならアクティビストの提案は通らないことが大半だった。何しろ日本には株式持ち合い(今は政策保有株)という互助制度があり、企業同士がお互いを外部の株主から守っていた。

 しかし政府や東京証券取引所が見直しを提言したこともあり、企業が保有株を減らしている。それに伴い、アクティビストの要求は重みを増し、時にはその株主提案が通るケースが増えているのだ。