アクティビストへの対応を市場が好意的に解釈するケースも

 ただし、株主提案をネガティブにとらえるのは間違いだ。

 昨年、株主提案によって9人中7人の取締役が選ばれた東洋建設は、1年前の株価は1000円前後だったが、現在は1400円前後。同じく株主提案が可決されたNCホールディングスやフューチャーベンチャーキャピタルも、1年の間に上下はあったが、株価は1年前と同水準で株価的ダメージはない。

 1年前の3月総会で御手洗会長が薄氷の再任を得たキヤノンは、今年の総会で女性取締役の選任を提案・可決された。この総会での御手洗氏再任への賛成率は90.86%と大幅に伸びた。しかも昨年3月には2900円前後だった株価が、今年3月現在では4500円前後と5割高。アクティビストへの対応が全てではないが、市場は1年間のキヤノンの動きを好意的に解釈した。

 前述のように企業の株式持ち合いは減少し続ける。また大手生保など機関投資家も、昔は会社側に立つことが多かったが、最近ではCSRなどに厳しい目を向けており、必ずしも与党ではなくなりつつある。

 そうした環境変化を踏まえれば、アクティビストの活動はさらに激しくなることは避けられない。つまりこれからは毎年のように、6月には企業vsアクティビストの戦いが繰り広げられることになる。

 そうであるなら、企業はアクティビストを恐れるのではなく、利用する方向にかじを切るべきだ。

 もともと日本国民や日本企業は、内部からの改革が苦手で、外圧があって初めて動き始めるところがある。アクティビストの提案を利用すれば、しがらみなどによってできなかった改革ができる可能性がある。祖業のスーパーを切り離したセブン&アイ、女性役員を受け入れたキヤノンなどはその好例だ。

 選択肢が増えたことを歓迎する。そう考えれば、アクティビストに対する向き合い方も変わってくるはずだ。

【関 慎夫(せき・のりお)】
1960年新潟県生まれ。横浜国立大学工学部情報工学科中退。流通専門誌を経て1988年(株)経営塾入社。2000年から延べ10年にわたり『月刊BOSS』編集長を務める。2016年に(株)経済界に転じ『経済界』編集局長に就任した。担当経験のある業界は電機、自動車、流通、IT業界など。