4月26日に、政府は巨大IT規制新法案(正式名称:スマホソフトウェア競争促進法案)を閣議決定した。アプリストアがアップルやグーグルによる寡占状態になっており、アプリを開発提供する事業者に対して過剰なルールや手数料の支払いが課されてきた。そんな不平等な市場環境を是正するために、他のアプリストアの参入をアップルとグーグルに許容させ、競争を促すために作られた新法である。
この新法は、3月7日に欧州連合(EU)で施行されたデジタル市場法(DMA)の後を追う形で作られた。デジタル市場法は、今回の日本の新法よりも多くの企業と多様な内容を規制の対象としている。日本政府の新法やEUのデジタル市場法から、どのようなGAFAMを取り締まる世界の動きが見えるのか。この問題に詳しい、東北大学大学院法学研究科(総合法制専攻)教授の伊永大輔氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──巨大IT規制新法案が閣議決定されました。どんな新法でしょうか?
伊永大輔氏(以下、伊永):これは、もはや国民生活にとって重要と言っても過言ではないスマートフォンに関する、競争を促進するための法案です。
スマホのアプリを販売・提供するアプリストアを、スマホの端末を販売しているアップルとグーグルがこれまで独占的に提供していましたが、代替的なアプリストアを認めて、アプリ市場を開放していくことを目的にしています。
新法により、アップルとグーグルのアプリストア以外にも、独自の基準を持つアプリストアが参入することができれば、アプリストアがアプリ事業者に課すルールや課金の内容がアプリストアごとに異なり、質と価格の面で競争が始まります。
この新法の検討は3年ほど前から始まりました。当時は、まだ今ほどにはスマホは普及していない状況でしたが、令和5年度の調査によると、全世代において9割を超える普及率になっています。スマホはもはや、生活ばかりではなく、ビジネスにおいても重要な位置づけになっていると言っても過言ではありません。
特に若者は、スマホを通してネットにアクセスすることが常態化しており、パソコンではなく、スマホの重要性がますます上がっています。こうなってくると、企業はスマホを通じてしか客にリーチできなくなってきます。
だからこそ、スマホの画面やアプリ、ブラウザ等に、どのようなものが表示されるかが企業にとっての死活問題になる。こうした背景があり、スマホ内の環境をより透明化して、競争原理を働かせる必要性が高まってきたのです。
特に、スマホのOS事業者は、全世界でもほぼアップルとグーグルしかありませんから、この2社の寡占は世界的にも問題になっています。日本ではアップルが強く、世界的にはグーグルが強いという状況です。
この問題に最初に取り組んだのが、3月にEUで施行されたデジタル市場法で、4月に一足遅れで日本でも似た法案を閣議決定しました。今後、国会で審議されます。
──これまで一択だったアプリストアが複数できると、消費者にはどんなメリットがあるのでしょうか?