ヒトが自由自在に冬眠できる未来

 砂川氏の研究のゴールは、人類冬眠計画の達成にある。人工的なヒトの冬眠が可能になれば、臓器移植の際の臓器の運搬などで大きなメリットを得られるだろう。あるいは治療に緊急を要するにもかかわらず医療機関が遠くにある場合なども、患者をいったん冬眠させてから運べばよくなる。冬眠は生きるための時間稼ぎをしてくれるのだ。

図:冬眠様状態の誘導による心臓血管手術時の腎臓保護効果(砂川氏提供)
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「人工冬眠を実現できれば、時間の概念が大きく変わるでしょう。仮に治療法がもう少しで見つかりそうな病気にかかった場合なら、その治療法が確立されるまでの数年間を冬眠して待つ手も出てきます」

「そのときには年齢もしくは寿命についての捉え方も、今とはまったく異なるものになるでしょう。なぜなら冬眠している間は、老化が遅れる可能性も高いと考えられているからです」

 もちろん人工冬眠を実現するためには、まだいくつもの課題をクリアしなければならない。なかでもヒト特有ともいえるのが、脳に関わる問題だ。平常時の脳は、ヒトの全消費カロリーのうち20~25%を消費している。だからこそヒトならではの脳の働きを維持できている。

 哺乳類の中にも冬眠する動物はいるが、ヒトほど脳の大きなものはいない。仮にヒトの人工冬眠が可能になったとして、そのとき脳はどのような状態に置かれるのか。