ヒトは本来、冬眠する生き物だった?

「冬に眠る」と書けば、多くの人がクマを思い浮かべるだろう。クマは食べ物を手に入れにくくなる冬に備えて、秋のうちにできるだけ多く食べて体内に栄養を蓄えておく。つまり秋に出会うクマは、手当たり次第とにかく何でも食べなければならないと考えている。だからこの時期のクマは要注意なのだ。

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「ただし実は冬眠と季節に関係はありません。季節に関わらず食べ物がない環境で、生き残るための省エネモードが冬眠です。逆にいえば、冬眠しない動物は、基本的に毎日何かを食べないと生きていけないわけです」

冬眠に備えて穴を掘るヒグマ(写真:MEDIAIMAG/Shutterstock)

「冬の寒さの厳しい環境では、食べ物を得るのが難しい。そうした状況に対して動物たちは、さまざまな生存戦略を取ります。その一つが冬眠です。要するに食いだめをして、冬の間に必要なエネルギーを蓄えておく。冬になると一切飲み食いせず、動きも止めてじっとやり過ごす。だから冬眠とはある意味、究極の省エネ術ともいえるでしょう」

 冬眠する動物の多くは哺乳類だが、もちろん哺乳類がすべて冬眠するわけでもない。冬眠する動物としない動物は、たとえば進化の系統上で考えれば、どこで分岐したのだろうか。この問いに対する答えは2つ考えられると砂川氏は語る。

「一つは、もともと哺乳類は冬眠しなかったけれども、進化の過程で特定の哺乳類が冬眠能力を獲得したとする考え方です。もう一つは逆に、もともと哺乳類とは冬眠する動物だったという考え方も成立します。進化の過程で冬眠しなくても生存できるように環境が変わった結果、多くは冬眠能力を失ったと考えるのです」

「すなわち環境の変化に影響されず冬眠能力をキープした哺乳類が、今でも冬眠しているという解釈も成り立つ。今のところ、答えは出ていません。仮に冬眠に決定的な影響を与えている遺伝子が見つかれば、決着はつくと思います。けれども現時点では、そのような冬眠遺伝子は見つかっていません」

 冬眠について明らかになっている事実は、まだ少ないようだ。では「眠る」行為自体はどこまで解明されているのだろうか。