橋下徹氏が投稿「無所属出馬批判」の的外れ

 代表的なものを三つ挙げる。

 まず、蓮舫氏が立憲を離党し、無所属で出馬することへの批判だ。

 蓮舫氏が出馬を表明した5月27日、元大阪市長の橋下氏は自らのX(旧ツイッター)で「立憲民主の看板に自信がないのか無所属で出馬」「安易に無所属に逃げるべきではない」などと投稿。ここからネット上には、同種の「蓮舫批判」が次々とあふれ出した。

 言うまでもないが、国政は議院内閣制で政府・与党と野党が対峙するのに対し、地方政治は二元代表制で首長と議会が対峙する。強い権限を持ち、多様な意見を持つ議会に1人で対峙する首長は、候補者が幅広い民意を代表するため、選挙の際に所属政党を離れ無所属になることは、むしろ当然だった。

 今回の蓮舫氏のケースだけ批判の対象になるのはおかしい。

 蓮舫氏の挑戦を受ける小池百合子知事も、過去2回の自身の選挙は無所属で戦った。初挑戦した2016年の都知事選は、無所属で立候補しながら自民党を離党していなかった。あれだけ都議会自民党を「伏魔殿」と罵っていた小池氏が自民党を離党していなかったことの方がよほど驚きだが、そんなことには全く目が向かない。

 見事なダブルスタンダードである。

2016年、初めて都知事選に挑んだ小池百合子氏。このときはまだ自民党を離党していなかった(写真:共同通信社)2016年、初めて都知事選に挑んだ小池百合子氏。このときはまだ自民党を離党していなかった(写真:共同通信社)
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産経新聞「ボーナス惜しさの自動失職」

 次に、蓮舫氏が参院議員を辞職せず、都知事選告示の20日に「自動失職」することへの批判である。

 蓮舫氏が5月31日までに辞職すれば、参院議員のボーナス支給が満額の約8割にとどまるため、ネット上で「蓮舫氏はボーナス惜しさに辞職を引き延ばすのか?」との声が上がり、産経新聞がこれを拾って記事化したのだ。その書き方が振るっている。

「蓮舫氏の議員辞職は都知事選出馬に伴うため事情が異なるものの、不祥事で辞める政治家に対するボーナス支給を問題視してきた背景がある」

 書いた側が「こんなの書いても意味がない」と白状しているような記事だ。

 国会でも論客で知られた蓮舫氏が、自身の選挙準備より国民の負託を受けた参院議員としての職責を全うすることを優先したことを、「政治とカネ」の不祥事にまみれ、国会から逃げて議員の職責を果たさなかったにもかかわらず、ボーナスだけは満額支給された過去の自民党議員と一緒にする意味が、筆者には全く分からない。