何がこのような結果をもたらしたのであろうか。

 まずはウクライナ戦争の影響である。物価は上昇し、人々の生活は苦しくなった。それだけに、ウクライナのことよりも自国が大事だという意識が高まっている。

 また、治安の悪化など、移民に対する不満も高じており、過剰な気候変動対策が自分たちの生活を脅かすという思いを強めている。

 このような国民の不安に応えるべく、極右ポピュリスト勢力は、移民、環境保護、EV推進、LGBTに反対し、ウクライナ支援にも消極的である。そして、EUそのものに対して批判的で、EUの課す規制に反対している。欧州各国で農民がトラクターで道路を閉鎖するなどの抗議活動を行ったことは記憶に新しい。

ドイツ・オーストリア・イタリアでの「極右躍進」が意味するもの

 欧州議会の選挙結果は加盟各国によって異なるが、統合欧州の屋台骨であるドイツとフランスにおいて、極右の伸びが著しく、衝撃が広まっている。

 ドイツでは、ドイツでは移民排斥をうたう「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢力を伸ばし、昨年12月には東部ザクセン州のピルナ市長選でAfDの候補者が当選している。今回の欧州議会選挙では、野党で保守のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が29議席、AfDが15(+6)議席、ショルツ政権与党のSPD(社会民主党)が14(+2)議席、緑の党が12(−9)議席という結果となった。AfDが票を伸ばし、環境保護をうたう緑の党が大きく票を失った。

 オーストリアでも、極右が第一党となった。

 イタリアでは、ネオファシストのメローニ首相が率いる「イタリアの同胞」がイタリアで最多の28.8%を獲得した。