保守政党までRNに協力

 国民議会は任期5年であり、今の国民議会は2022年6月に選出された。したがって、まだ任期を3年残しての解散総選挙である。それだけに、国民にとっても、解散というのは青天の霹靂である。

 前述したように、過去2回の大統領選挙では、決選投票で、左翼までも反国民連合で団結したために、ルペンは敗退している。

 ところが、野党で保守の共和党(LR)のシオッティ党首が、6月11日のテレビ・インタビューで、RNと協力すると表明し、大きな波紋を広げている。

 LRは、1958年にドゴールが創立した今の第5共和制の中心的な政党であるゴーリスト政党の流れをくむ。この伝統的保守政党がルペンと組むというのは、ゴーリストのシラク大統領やサルコジ大統領の時代にはありえないことであった。それだけに、党内でも反発を呼んでいる。パリを含むイルドフランス州のトップで、私の友人のヴァレリー・ペクレスはシオッティの方針に猛反発している。

 LRは、国民議会577議席のうち62議席と1割程度の力しか持っておらず、シオッティはRNと連携することによって生き残りを図ろうとしたのである。現有議席は、RNが88議席である。

 共和党のこの内紛状態を見て、手を突っ込んでいるのが、マクロン大統領が率いる中道右派の「再生(RE)」(170議席)である。シオッティに反旗を翻したLR議員が離党すれば、その受け皿になり、党勢を拡大しようとしている。

 一方、左翼陣営は、大同団結をしようとしている。「不服従のフランス(FI)」が75議席、「社会党・同盟グループ(SOC)」が31議席、エコロジストが23議席、共産党を含む民主・共和左翼グループ(GDR)が22議席を有しており、この4派が連携し、「人民戦線」を結成した。1936年にはレオン・ブルムの人民戦線内閣が成立しているが、このときと同じ「人民戦線」という言葉を使っている。

 左翼4派の議席の合計は151議席である。左翼は、極右の伸張に危機感を抱く有権者に訴えて、勢力を拡大する方針である。

 フランスの世論調査機関IFOPの6月12日の調査では、RNの支持率は35%、マクロンの与党連合は2割以下である。また、テレビ局BFMTVなどの調査(6月11〜12日)によると、最大限に得票が伸びれば、RNが国民議会の過半数を制するという。

 7月26日にはパリ五輪が開幕する。その準備に追われるパリ市にとっても、直前の総選挙は迷惑であろう。

 フランス国民はどのような審判を下すのか。マクロンの賭けは成功するのか。

【舛添要一】国際政治学者。株式会社舛添政治経済研究所所長。参議院議員、厚生労働大臣、東京都知事などを歴任。『母に襁褓をあてるときーー介護 闘いの日々』(中公文庫)『憲法改正のオモテとウラ』(講談社現代新書)『舛添メモ 厚労官僚との闘い752日』(小学館)『都知事失格』(小学館)『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(ともに小学館新書)『プーチンの復讐と第三次世界大戦序曲』(インターナショナル新書)『スマホ時代の6か国語学習法!』(たちばな出版)など著書多数。YouTubeチャンネル『舛添要一、世界と日本を語る』でも最新の時事問題について鋭く解説している。