おわりに

 習近平国家主席は、2023年12月31日、新年を迎えるにあたって恒例のテレビ演説を行い、「両岸の同胞は手を携えて心を合わせ、民族復興という偉大な栄光を分かち合わなければならない」と訴えた(出典:産経新聞2023年12月31日)。

 歴史的必然なら、中国は、台湾に対して「文攻武嚇」(言葉で攻撃し、武力で威嚇する)せずに、気長に祖国統一を待っていればよいと筆者は考える。

 鄧小平氏は1978年7月、北京を訪れたレスター・ウォルフ米下院議員に対して、「台湾の問題は脇に置いておこう。台湾は、木から熟したリンゴのように(中国の手に)落ちるだろう」と語った。

 鄧小平氏こそ、台湾統一は歴史的必然と思っていたのかもしれない。

 ところが、今、習近平氏は、祖国統一は歴史的必然と言いながら、リンゴが落ちてくる前に、自らもぎ取りにいくと言わんばかりに、台湾への武力行使も辞さない姿勢を示している。

 習近平氏には野心がある。

 2018年3月に憲法を改正し、2期10年までとする国家主席の任期制限を廃止し、さらに「68歳定年」の慣例を破り、2022年10月に異例の3期目政権を発足させた同氏は、2027年以降の4期目政権も見据えている。

 既述したが、そのため台湾統一という偉業達成が必要なのである。

 習近平氏の個人的な野心のために、台湾有事が生起することは御免こうむりたい。