ChatGPTが答えた、小学生でも分かるmRNAワクチンの説明
先ほどの厚生労働省によるmRNAワクチンの説明文を、ChatGPTに書き直してもらうことにしよう。いま筆者が、厚生労働省の文章をChatGPTに与えた上で、「子供でも分かるように、たとえを使って書き直して下さい」と指示したところ、次のような答えが返ってきた。
これらのワクチンは、体の中にウイルスの設計図を入れるようなものです。その設計図を使って、体がウイルスの一部を作り、それに対して戦うための道具(抗体)を作ります。これで、体が本物のウイルスと戦う準備ができるのです。今、新型コロナウイルスの外側にあるトゲトゲ(スパイクタンパク質)に対する設計図を使ったmRNAワクチンが、世界中で使われており、日本でも接種されています。
なるほど、ウイルスの一部を体内で作り、それに基づいて抗体を作り出すようだ。しかし「体の中にウイルスの設計図を入れる」という部分が引っかかる。そんな恐ろしいことをして大丈夫だろうか。
そこで改めて、ChatGPTに「体の中にウイルスの設計図を入れるなんて、怖くないですか? 本当に大丈夫なの?」と尋ねてみた。返ってきたのが次の答えだ。
心配しないでください。ワクチンに使われる設計図(遺伝情報)は、ウイルスそのものではなく、一部分だけです。本物のウイルスにかかることなく、体が安全に学習できるようになっています。これは、怖いお化けの絵を見せて、どうやって退治するかを教えるようなものです。本物のお化けは出てこないので、安心して学べます。医師や科学者がたくさんの研究をして、ワクチンが安全で効果的であることを確認しているので、大丈夫です。
なるほど、お化け(ウイルス)そのものを体内に入れるのではなく、「お化けの絵」を使ってお化け退治のイメージトレーニングをするということか。こうした説明なら一般の人々にも理解しやすいし、安心感が得られるだろう。
専門家にとっては、いまChatGPTが生成した説明文は、ナンセンスとしか言いようのないものかもしれない。mRNAワクチンが体内で生み出すのは「お化けの絵」などではないし、抗体が作られるプロセスもイメトレのようなものではまったくない。
その良し悪しは別にして、こんなたとえ話をすることなど、最初から思いつかないのではないだろうか。
しかしどんなにバカらしい内容だとしても、一般の人々や社会全体にとって重要なのは、ある科学的知識の詳細まで理解することではなく、その本質と私たちにとっての意味を掴むことだ。
それは科学者たちが専門家の間で行うコミュニケーションとは異なる。したがって、巧みな文章を生み出してくれるツールであるChatGPTのような生成AIが、科学コミュニケーションを支援するツールになり得る理由である。