歯磨きというと、口臭予防や食べカスの除去と考える人もいますが、これらはあくまでおまけ。

 歯磨きとは、虫歯菌と歯周病菌など、病原細菌を減らすためにおこなうもの。つまりは除菌こそが歯磨きの大切な本質なのです。

プラーク(歯垢)は最初は無害だが徐々に有害化する

 皆さんもよく知るズキンズキン痛む黒くて大きな穴が空く虫歯。一体、どのように作られていくのでしょう?

 そもそも虫歯を作り出しているのは、その名の通り「虫歯菌」です。私たちの口内にいる何億・何兆もの菌は、実は生後間もない時期には、ほぼ存在しません。多くの菌は、生後6カ月頃の乳歯が生え始めるタイミングで両親などから感染しはじめ、歯に付着していきます。

 もっとも感染するのは、生後18~30カ月ごろ、特に奥歯の生える2歳半頃は要注意です。

 歯の表面はツルツルしているのにどうして菌がくっつくのか疑問に思うかもしれませんが、歯の表面には歯を守るための唾液成分でコーティングされた「ペリクル」という薄い膜が張られています。このペリクルに無害な菌が付着し、だんだんと密集していきます。

おとなの歯磨き』(伊東材祐著、フローラル出版)

 このように菌が密集している状態を皆さんも聞き馴染みのあるプラーク(歯垢=しこう)と呼びますが、このときはまだ、見覚えのある白いネバネバした物質ではなく、人体への害もほとんどありません。しかし、時間を追うごとに、プラークの上に虫歯菌や歯周病菌がくっつき、より強固で有害なプラークへと変貌(へんぼう)します。

 無害なプラークは簡単に除去できますが、有害なプラークに発展すると、ふだんの歯磨きでは落とすことのできない厄介者へと変わってしまいます。

 無害から有害で厄介物へと変わるプラーク。この変貌には虫歯菌のある特性が強く影響をしています。