足元を見られているバイデン政権のイスラエル牽制

 現在、バイデン政権は大統領選を控え、アメリカ世論に配慮せねばなりません。そこで、イスラエルに対する武器支援を停止する可能性に言及し、ネタニヤフ政権の暴走を牽制しようとしています。

 しかし、ネタニヤフ首相らにとって、「ガザ占領政策」は既定路線であり、バイデン政権に耳を貸す気はありません。アメリカがイスラエルに何を言おうとも、最終的にアメリカは必ず、イスラエルの側に付くとわかっているのです。

 イスラエルの産業界を牽引するハイテク産業が戦争を望み、リクードや極右政党を支持し、パレスチナ人との対立を煽るという自己演出的なメカニズムがイスラエル内部で維持されています。このメカニズムが自然肥大化していく中で、イスラエルの対外路線もまた、必然的に強硬なものになっていくという構造的な問題があります。

著者の新著『日本人が知らない! 世界史の原理』(共著:茂木誠、ビジネス社)

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