なぜ円安だと株価が上がるのか?

 以下、東京大学教養学部生向けの簡単なモデルで考えてみましょう。

 いま、家電でも自動車でもいい、輸出業種の企業が海外で100ドルの売り上げがあったとします。

 仮に1ドル120円の為替レートであれば、日本国内では1万2000円と計上されるでしょう。

 また仮に1ドル100まで円高になると同じ売り上げでも円建てでの収益は1万円に下がって「見えて」しまう。

 これは数字の上で業績悪化を示してしまうので、結果的に株価は下がってしまう。

 逆に1ドルが150円の円安になれば、同じ売り上げなのに収益が1万5000円に上がって「見える」から、株価は上がる・・・端的には、こういった骨格の話です。

 これだけではさすがに芸がありませんから、もう少し学生向けにひねってみます。

 いま、N期の売り上げが

100ドル×120円/ドル=1万2000円

 だったとしましょう。

 ところがN+1期には業績が5%悪化して、売り上げが95ドルに下がってしまった。そうなると本来は

95ドル×120円/ドル=1万1400円 

 の収益になっているはずです。ところがここで何ちゃらミクスの手品で円安が誘導されたとしましょう。10%の円安で1ドルが120円から132円になったとすると、あらあら不思議、

95ドル×132円/ドル=1万2540円

 と、売り上げが伸びたかのごとき「その場しのぎの見せかけ」ができてしまったではないですか!

 国難級の円弱になっても、日銀総裁がぱっとしないコメントしか出せない本質的な骨格がここにある。

 こう教えると、文系でも理系でも教養学部生には普通に通じます。一つの「からくり」が明らかになりました。