暖房無しで足元も20℃。「暖かい」というより、「寒くない」
一泊した感想は、「暖かい」というより、「寒くない」というものです。私が当時住んでいた木造アパートでは、冬の夜間は寝る直前までガスファンヒーターをつけ続け、それでも足元が寒いので、厚手の靴下を履き、その上から起毛のスリッパまで履いていました。
ところがこの日は暖房をいっさい使わないのに、裸足で歩いても寒くありません。日中の気温が高かったという理由もありますが、日没後は外気温が7℃に下がっていました。それにもかかわらず、室内は昼間と変わらず20℃前後を保っていました。日中、太陽の日射熱を室内に取り入れ、その熱を逃さないことで、夜になっても暖かさを維持できていたのです。
さらに衝撃的だったのは、室温だけでなく、足元も20℃だったことです。一般的な住まいでは、寒い冬に暖房を20℃に設定しても、暖かい空気は上に上がり、天井の温度と床の温度にはムラができます。そのため頭のほうは暖まっても、足元は20℃より寒くなってしまいます。しかしこのモデルハウスでは、それがまったくありませんでした。暖房器具に頼らなくていい家は、他の部屋との温度差もなく、部屋間の移動もおっくうになりません。
風呂から出た後も、いつもなら体が冷えないよう、あわてて体を拭いて服を着るのですが、この家ではゆっくりと着替えることができました。これも人生で初めての経験です。このような環境であれば、ヒートショックも起こらないでしょう。
「なるほど、こういうことか」。五感で体験して、それまで何度も話で聞いてきたことが、初めて腑(ふ)に落ちました。ほとんどの人は「家はだいたいこのようなもの」という固定観念を持っています。私もそうでしたが、この宿泊体験でそれまでの自分の「当たり前」がまったく覆されました。