(写真:Pheelings media/Shutterstock)
  • すでにゴールデンウィークから暑い日が続くが、今年の夏も酷暑に見舞われそうだ。
  • 電力不足が懸念される中、暑さ寒さをしのぐにはエアコンの省エネ性能の向上は必要だが、そもそも日本の住宅は「断熱性能」が悪すぎる。
  • 9割の住宅はまともに断熱されておらず、国が定めた最高等級の断熱住宅でも欧米や韓国の基準では違法建築になるケースも。(JBpress)

(高橋 真樹:断熱ジャーナリスト)

※この記事は、『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札 』(集英社新書)から一部抜粋・編集したものです。

後編:日本一の猛暑でもエアコン稼働は最小限ですむ?高機密・高断熱なら夏も冬もぐっすり眠れる、「エコハウス」体験記

 冬の朝、寒さで布団から出られない。夏の夜は暑くて寝つけないけれど、エアコンをつけると冷えすぎる。電気代やガス代の高騰で、光熱費が大変……。このようなことで頭を悩ませていないでしょうか。

 これらはすべて、家の燃費が悪いことが原因です。「車ならわかるけれど、家の燃費なんて聞いたことがない」と思う方もいるはずです。いままで、日本では人生で一番高い買い物である家の燃費について、売る側も買う側も気にしてきませんでした。それによって、住まい手の人生にさまざまな損失が生じてきました。

 例を挙げれば、「交通事故より多くの人が家庭内の事故で亡くなっている」「窓が結露してカビが増え、アレルギーが悪化する」「光熱費や修繕費などのランニングコストとして、家をもう一軒買えるほどの費用を支払う」といったことなどです。

 しかし、家の燃費を抑え、さまざまな問題を解決する方法はすでに存在します。それが、本書のテーマである「断熱」と「気密」です。これまでは、寒さや暑さをがまんするか、もしくは光熱費をたくさん使って適温にするか、という選択肢しかありませんでした。

高橋 真樹(たかはし・まさき)
1973年、東京生まれ。ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。国際NGO職員を経て独立。国内外をめぐり、環境、エネルギー、まちづくり、持続可能性などをテーマに執筆・講演。取材で出会ったエコハウスに暮らす、日本唯一の「断熱ジャーナリスト」でもある。著書に『日本のSDGs-それってほんとにサステナブル?』(大月書店)、『こども気候変動アクション30』(かもがわ出版)、『ぼくの村は壁で囲まれた-パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。

 でも、住宅をしっかり断熱すれば、冬も夏も快適に、そして光熱費を抑えて過ごせるようになるのです。「新築だけの話でしょう?」と思うかもしれませんが、いま住んでいる住宅でも可能です。

 家の燃費性能が悪いことで損をしているのは、住んでいる人だけではありません。国家経済やエネルギー安全保障といった面でも、実は大きな損失を招いています。そしてこのままでは、そのせいで日本はさらなる危機を迎えてしまいます。危機を逆転するための切り札が、家の燃費性能を高める「断熱」なのです。

 私はこの10 年間、住宅の断熱についての取材を重ねてきました。その過程で、偶然にも世界レベルのエコハウスに住むことになり、そこでの暮らしぶりについて発信をするようになりました。そして、大袈裟(おおげさ)ではなく「断熱が日本を救う」と考えるようになりました。