日本では所有者不明の土地が増え続けている。写真はイメージ(写真:JinFujiwara/Shutterstock.com

 2024年4月から相続によって取得した不動産の登記が義務化された。相続の発生を知り、かつ、その対象となる不動産の所有権を取得したことを知った相続人は、そこから3年以内に相続登記を行わなければならない。正当な理由がなく期限内に登記をしなかった場合は、10万円以下の過料が科されることがある——

 既に相続を終えた人や親から不動産を受け継ぐ可能性がない人は「自分には関係ない」と考えているかもしれない。だが、実はこの制度、4月より前の相続で取得した不動産にも適用される。不動産の名義人(故人)の相続人として名義変更の同意を求められる可能性もあり、下手をすれば相続を巡って親族が揉める“争続”に発展するかもしれない。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

ある日届いた「親展」の封書

 私事だが、以前、郷里の司法書士事務所から突然「親展」の封書が届き、開けてみたら遺産分割協議書が入っていたことがあった。

 もちろん、それとは別に手紙が同封され、なぜ遺産分割協議書を送るに至ったかが説明されていた。要は、何十年も前に亡くなった母方の祖母名義の土地が残っており、家督を相続した叔父が自分の名義に書き換えるために、司法書士に依頼して祖母の相続人全員に同意を求めたということだった。

 母は筆者が高校生の頃に亡くなっていたので、母の“代襲相続人”として筆者のところにも封書が届いたのだろう。

 念のため叔父に連絡して詳しい説明を受けた後、署名・押印した遺産分割協議書や印鑑証明などを司法書士事務所に返送した。とはいえ、いきなり遺産分割協議書が送られてきた体験は結構なサプライズとして記憶に刻まれた。

 ところが最近、「突然届いた遺産分割協議書事件」は、それほどレアケースでもないことが分かった。筆者の周りだけでも同様の体験をした人が2人もいたからだ。

あなたにも突然、遺産分割協議書が届くかもしれない(写真:mapo_japan/Shutterstock.com