結婚、出産、離婚、子どもの受験、親の介護…。人生100年時代に直面する様々なライフイベントを乗り越えていくために必要なのが「お金」です。ただ、日々の生活に追われていると、いざという時のための「マネープラン」を考えていないケースがほとんどではないでしょうか。
Money&You取締役でファイナンシャルプランナーの高山一恵氏のもとに寄せられた相談事例を通じてマネープランを考えていく連載「人生100年のマネー相談」。今回は、定年退職で退職金3000万円を手にした60代男性が株式投資で大失敗をしてしまった事例をお話しします。(JBpress)
(高山 一恵:Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー)
(注:相談者のプライバシーに配慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください)
今回ご相談にやってきたのは、30代の会社員M男さんです。M男さんは、有名企業にお勤めの会社員で、奥様と小学生のお子さんと3人暮らしです。
実は今回は、M男さんのご家庭のご相談ではなく、M男さんのお父様のご相談でいらっしゃいました。
早速、お話を聞いてみると、お父様は、元々は公務員で、定年退職まで、真面目にコツコツと働いてきたそうです。そして、これまで苦労して働いて定年退職で手にした退職金3000万円をなんと、ほぼ全額株式に投資してしまったとのこと。その株式投資で利益がでているならともかく、数千万円もの損失を抱えているというのです・・・。
定年退職後、タガが外れてしまった父
そもそも公務員としてコツコツと真面目に働いてきたM男さんのお父様が、なぜ、3000万円もの大金を株式に投資してしまったのでしょうか。
まず、M男さんのお母様についてお話しすると、M男さんのお母様は、脳梗塞を患い、40代で亡くなりました。お父様は、懸命に働き、贅沢もせず、男手ひとつでM男さんと、M男さんの妹さんを育ててきました。
M男さんも妹さんも有名大学を卒業し、有名企業に就職。お父様としては、2人の子どもたちが立派に育ったのを見てホッとしたのでしょう。
退職後は、残りの人生は自分のために謳歌したい!とタガが外れてしまったようでした。地域のサークル活動に参加したり、旅行に行ったり、ゴルフを始めたり、恋人を作ったりと、まさに人生を謳歌していました。
そのうちに、これまで貯めてきた貯蓄も底をついてきてしまい、ついに退職金を株式に投資して一気にお金を増やしたいと考えたそうなのです。