美郷雪華の香りは前頭葉の活動を抑制

 さらに美郷雪華には、カンファーやボルネオールといった成分も多く含まれています。カンファーというのはクスノキの香り成分で、樟脳(しょうのう)とも呼ばれます。クローゼットの中の防虫剤の匂いです。ボルネオールは一部のマツに含まれている成分で、眠気を覚ます効果を持っています。

 カンファーもボルネオールも、交感神経を優位にする香り成分です。副交感神経を優位にするリナロールや酢酸リナリルが少なく、代わりに交感神経を優位にする香り成分が含まれている美郷雪華の香りは、ヒトに対してどのような効果を与えるのでしょうか。

 11人に美郷雪華の香りを30分間嗅いでもらい、その後、唾液を採取してストレスの指標となるコルチゾール値を測定したところ、ストレスが減少していることが分かりました。

 次にNIRSで香りを嗅いだあとの脳活動を測定したところ、美郷雪華の香りはラベンダーよりもさらに強く前頭葉の活動を抑制することが示されました。

 つまり、リナロールや酢酸リナリルとはまた違うメカニズムで、鎮静作用を発揮していると考えられます。

「植物の香り」のサイエンス なぜ心と体が整うのか』(塩田 清二、竹ノ谷 文子 著、NHK出版新書)