2019年にウクライナで行われた研究では…

 主観的な気分については、ペパーミントは注意力を高め、イランイランは注意力が低下した代わりに、落ち着きが増したことが分かりました。

 記憶と香りの関係について調べた研究は、ほかにもあります。
 
 2019年に発表された、ウクライナで行われた研究です*2。研究に参加したのはウクライナの大都市に住む13歳から17歳の学生79人です。

*2:Filiptsova O.V et. al., “The effect of the essential oils of lavender and rosemary on the human short-term memory.” Alexandria Journal of Medicine, 2018, 54:1, 41-44

 参加者は3つのグループに分けられ、①香りなしの部屋、②ラベンダーの精油の香りを満たした部屋、③ローズマリーの精油の香りを満たした部屋、のどれかで記憶のテストを課せられました。

 記憶のテストは2種類です。1つ目は画像記憶のテストで、4×4のマス目の表に16種類の画像が載っているものを20秒間見て、その後どれだけ多くの画像を思い出せたかというものです。2つ目は数字の記憶テストで、12個の2桁の数字が書かれた表を20秒間見て、その後どれだけ多くの数字を思い出せたかというものです。

 さまざまな研究から、ラベンダーは副交感神経を優位にして興奮を鎮める香りだと考えられています。

 一方で、ローズマリーは交感神経を優位にして脳を刺激する香りだといわれています。ローズマリーは地中海地方が原産のシソ科の低木です。日本の気候でも育つため、生垣として植えられていることも多い植物です。ハーブとして、肉や料理にもよく用いられます。

 異なる効果が期待される2つの香りですが、結果はどうだったのでしょうか。