記憶力を高める香りはあるのか

 2009年に、144人の参加者を対象に、イランイランの精油の香りとペパーミントの精油の香りが、認知能力にどのような影響を与えるのかを調べたイギリスの研究が発表されています*1

*1:Moss M et. al., “Modulation of congnitive performance and mood by aromas of peppermint and ylang-ylang.” International Journal of Neuroscience, 2008, 118:1, 59-77

 ペパーミントは交感神経を優位にして覚醒させ、注意力を高める作用があると考えられています。

 一方、イランイランはアロマセラピーや香水に興味がない人にとっては、見たことも聞いたこともない植物でしょう。香りを知っている人も、どんな植物なのかということまでは知らないかもしれません。

 イランイランは大きなものだと高さ30メートル以上になる熱帯の樹木で、大きな黄色い花をつけます(ピンクの花をつけるものもありますが、精油の抽出用には黄色の花が良いとされています)。濃厚な甘い香りに、どこかエスニックなスパイシーさがあります。ココ・シャネルが初めて世に送り出した香水N°5にも使用されています。

 作用としては鎮静や血圧を下げる効果があると考えられていますが、まだ科学的なエビデンスは多くはありません。ペパーミントとは逆の作用があることを期待されて、この研究で採用されたのだと思います。

 この研究で参加者たちは、単語の記憶テストや、刺激に応じて素早くボタンを押すテスト、空間記憶、単語の連想などのさまざまなテストを行いました。

 その結果、ペパーミントの香りが記憶力を高めたことが分かりました。

 一方、イランイランの香りは記憶力を低下させましたが、処理速度は向上させました。