香りで結果が異なった画像と数字の記憶

 実験の結果、ラベンダーのグループもローズマリーのグループも、香りなしのグループに比べて画像記憶の成績が大幅に向上していました。

 一方、数値記憶に関しては香りありと香りなしで統計的に有意な差はありませんでした。しかし、平均値ではなく、中央値(数値を小さいほうから順番に並べたときに真ん中に位置する値)は、ラベンダーとローズマリーで統計的な差がありました。ラベンダーグループの中央値は5、ローズマリーは7だったのです。

 これはラベンダー精油を吸入すると、ローズマリー精油を吸入したときと比べて数値記憶の生産性が大幅に低下したことを表しています。

 さて、どちらの香りでも画像記憶の成績は高まりましたが、これはラベンダーの場合は緊張を解いてリラックスできたことの効果、ローズマリーの場合は交感神経が優位になり集中力が高まった結果と考えることができるかもしれません。

 数値記憶に関して、香りなしの場合と差が出なかったのは残念ですが、ラベンダーの香りで記憶の効率が下がったということは、数値を処理する場合は画像とは異なり、交感神経を優位にして緊張や集中力が高まった状態のほうが、よいパフォーマンスを発揮できるということなのかもしれません。

 このような研究から分かることは、記憶力や脳のパフォーマンスを上げる香りは、個人の特性や状況、処理すべきタスクによって異なる可能性があるということです。

 緊張しすぎるせいで本来の力を発揮できない人は、鎮静効果のあるイランイランやラベンダーの香りを嗅ぐことで興奮が静まり、落ち着いてテストなどに臨むことができるでしょう。逆に、気が緩まりすぎて集中できない人は、ペパーミントやローズマリーのような脳を活性化する香りを嗅ぐといいかもしれません。