経済理論より教団の教義
しかし、最近になって当時の事情が明らかになってきた。じつは、安倍政権は、日銀総裁を黒田東彦氏に入れ替えただけではなかった。副総裁や審議委員を次々に金融緩和派に入れ替えていった。なかでも、新任の岩田規久男副総裁は、異次元金融緩和に理論的バックボーンを与える重要な役割を果たしていた。岩田副総裁は、異次元金融緩和を殺してしまう消費税増税に明確に反対して、そのことを黒田東彦総裁にも進言したという。
ところが、黒田東彦総裁は、岩田副総裁の進言をこう斬り捨てたという。
「消費税の引き上げは、景気動向に一切影響を与えない」
黒田総裁は、法学部出身ではあるものの、財務省時代にオックスフォード大学に留学して経済学を学ぶなど、経済の専門家だ。だから、アクセルとブレーキを同時に踏んではいけないことなど常識でわかっているはずだ。にもかかわらず、消費税増税を簡単に容認してしまった。ここがザイム真理教の恐ろしいところなのだ。経済理論よりも、教団の教義が優先されてしまう。
結局、この消費税増税は経済に致命的な被害を与えた。翌2014年度の実質経済成長率はマイナス0.4%に転落し、その後も低成長が続くことになったからだ。