そうした思惑があった大会だが、実力者揃いの中で鶴田はきっちりと存在感を示した。まず注目は、マードックと30分時間切れ引き分け、ホフマンに勝利した後に迎えた12月10日の岐阜市民センターではマイティ井上戦を迎えた。

 外国人のトップ選手ならば「馬場の次のボーイ」と認識して、鶴田の良さを引き出したファイトをしてくれるが、他団体の日本人同士となれば対抗戦。ましてや井上は前年2月までIWA世界ヘビー級王者として国際のエースに君臨していたプライドがある。

 向こうっ気が強いキャリア8年5ヵ月の大先輩にキャリア3年8ヵ月の鶴田は臆することなくぶつかっていった。井上がサマーソルト・ドロップ、フライング・ショルダーアタックと得意な空中殺法に出れば、鶴田もサイド・スープレックス、コブラツイスト、オクラホマ・スタンピードで応戦。

 鶴田が時間切れのゴングが鳴った瞬間にダブルアーム・スープレックスを爆発させて、自分が勝ったという印象を観客に植えつけたのが印象的だった。

「俺も看板を背負ってるし、元気だったから顔をバンバン張って“来るなら、来い!”って感じでね。“こんな野郎に負けるか、冗談じゃない!”ってバチバチ行ったよ。そういう気持ちで行かないと、身体の大きさが違うから」とは、後年の井上の言葉である。

マイティ井上と30分時間切れの激闘

 井上の次は12日の鈴鹿市立体育館で大ベテランのNWA世界ジュニア王者マツダと30分時間いっぱい戦い、翌13日の福井市体育館では国際のエース、ラッシャー木村戦。

 これも井上戦同様にゴツゴツの試合になった。スタートから木村のブレーンバスターと鶴田のサイド・スープレックスが炸裂し、木村は挑発するようにロープ・ブレイクの際に平手打ち。怒った鶴田はロープの反動を利したジャンピング・ニーパットという熱い展開に。最後は場外で平手打ちとチョップの乱激戦から両者リングアウト。

 結果だけみれば不本意だが、木村の「全日本のホープに負けていられない」という意地と鶴田の「国際のエースだろうが関係ない」という反骨心がぶつかり合った好試合だった。

国際プロレスのエース、IWA世界王者のラッシャー木村と両者リングアウト

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