夫婦の形が多様化するなか、ごく普通の夫婦に「夫婦カウンセリング」を受ける人たちが増えている。

 カウンセリングというと、こころの診療においてカウンセラーが相談者の悩みに耳を傾け、面談を繰り返し、助言したり気づきを与えたりすることで問題を解決していく行為を想像する人が多いかもしれない。

 しかし、カウンセリングを必要としているのはこころの悩みを持つ人だけではないのだ。

 いま夫婦はどんな問題に直面しているのか。

 2000組の夫婦をサポートしてきた夫婦カウンセラーであり、現在話題になっている書籍『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』 (SYNCHRONOUS BOOKS)の著者でもある安東秀海さんに夫婦が抱えている問題について聞いた。全3回の第1回。

(文・曽我部健)

コロナ以降に急増している夫婦の「不仲」とは?

 夫婦関係の問題と聞いて、多くの人が思い浮かべるのが不倫や浮気だろう。

 しかし、夫婦カウンセラーの安東秀海さんはカウンセリングの傾向として「コロナ禍以降、変化がある」と語る。

──夫婦カウンセリングに変化がある、その傾向とはなんですか。

「不仲」です。ささいなことでケンカになり、口もきかない期間が長く続くような著しく関係がこじれてしまった状態を指します。

──夫婦仲がよくないということは、何か理由があるのでは? それこそ不倫・浮気だったりセックスレスだったり。

 もちろん理由は細かくいろいろとあるはずなのですが、「コレ」といったはっきりとした原因がないのが「不仲」の大きな特徴です。

 例えば離婚がテーマになるような相談の場合、以前までもっとも多かったのが「不倫・浮気」をきっかけとするもので、全体の3割近くを占めていました。

 その次に相談が多かったのが「価値観の違い」「モラハラ」「育児方針の違い」「セックスレス」などです。

 いずれも問題の性質としては、非常に具体的ですよね。

 はっきりとした原因があり、それによって夫婦関係に大きな問題が生じているわけです。しかし、いまご相談が増えている「不仲」は少し違います。

──具体的に何かあったわけじゃないのに夫婦仲が悪い?

 不倫や浮気で夫婦仲が悪くなるのは、ある意味当たり前の話です。

 一方、「不仲」にはそうしたわかりやすい原因が存在しません。顕在化した大きな問題がないにもかかわらず、ちょっとした口論や、行き違いをきっかけに1カ月も2カ月もお互い口をきかない、話かけても相手に無視される。こうした相談がとても増えています。