連載:少子化ニッポンに必要な本物の「性」の知識

女性の色気は殿方を悦ばせる。だが、恥を忘れて乱れすぎると、愛想を尽かされることがある

 風俗とは、その時代や社会、階層の特徴にみられる日常生活の習わしを指し、「昭和の風俗」「下町の風俗」など、時代や地域のカルチャーをいう場合もある。

 現在では「風俗に行く」といえば、おそらく「性風俗店」を連想させるのではないか。性的なサービスを提供する店を「風俗店」。そこで働く女性を「風俗嬢」と一般的に称されている。

 性風俗という言葉は、性を軸とする人間の関係性をあらわす。

 性本能は普遍的なものであり、それを軸とする人間関係は、時代とともに様々な変遷を辿っている。

 もし、人間の歴史から、恋愛を除いたとしたら文化や芸術は成り立たず、古典文学には恋愛情事が描かれていないものはほとんどない。

 古代(奈良時代~平安時代)前期は、「この世」や「欲望」に否定的な傾向にある仏教の思想や道徳といった、人々の生活を律する概念は、まだあまり浸透していない。

 それゆえに、当時編纂された『古事記』『日本書紀』『万葉集』、その他によって表現された恋愛も結婚も、情熱的で自由奔放、健康的だ。

 いつの時代でも若者は、世の中の習慣や道徳を重んじることよりも、愛情と肉体を優先しながら活発に行動するものだ。

 未経験なことも多い反面、初老を過ぎた人間のように、理性によって抑制された感情や身体能力、機能の低下ということもない。

 自身の可能性と明るい未来を思い描き光輝いている。それが青春期にある若者の姿である。

母系家族がもたらした一夫多妻という慣習

 神武天皇が若かりし頃の情事を追憶した御歌が、『古事記』「神武天皇条」に記されている。

「葦原(あしはら)の湿(しけ)こき小屋(をや)にすが畳 いやさやしきて 吾(あ)が二人ねし」

(青々としたたくさんの葦の生えた草原にある侘びた小屋にて、菅(すげ)で編んだ敷物を敷き、2人は欣喜雀躍しながら、初めて互いの身体の感触を確かめ合い、秘密っぽい温潤にくつろいだね)

 神武天皇が皇后・伊須気余理比売(イスケヨリヒメ)と狭井河のほとりにある伊須気余理比売の実家で新婚の一夜を回想したものである。