一見して、それに真っ向から背くようなプーチン発言である。
だが、カールソン氏とのインタビューでプーチン氏は、「トランプとは個人としても知り合った仲だが、問題は政治家個人ではない、支配エリート層全般のそれだ」と述べている。
トランプ大統領になっても、米国の支配エリートたちを彼が統御し切れるのか、彼と短期の取引は可能であっても、今の米国では彼が去ればその取引の継続性は保証されないのではないかと、問うているのだろう。
加えて、相手を見て自分の出方を決めることが基本のロシアにとっては、次に何を言い出し、何をやり出すのかが分からない仁は、その相手として最も苦手とするところだ。
バイデンを挑発したプーチン発言
敵ではあっても、そして冷戦的な関係しか築けない相手であっても、それを安定させる姿勢をバイデン氏が維持するなら、予見不能な相手よりはまだマシということなのかもしれない。
もっとも、このプーチン発言は、傍から見てもバイデン氏を挑発したことに間違いない。
「お前さんとの方がやりやすいよ」などとプーチン氏に言われることは、対露批判に血道を上げるバイデン氏にとって飛んでもない侮辱にもなるからだ。
その後、バイデン大統領が国内遊説先でプーチン氏を「狂った奴」とかなり汚い言葉で罵ったのも、相当腹に据えかねたからだろう。
この罵詈雑言の類を受け、ロシア大統領府は公式にはバイデン氏を一応非難したが、プーチン氏自身は別途のインタビューで、「やはり思っていた通り、バイデンの方が良いことがはっきりした(自分にああ言われて怒るなら、正常な証拠)」と返している。
まるで駄々っ子をあやさんばかりのようにも聞こえる。からかいが過ぎるとバイデンが怒りのあまり、老いの一徹でさらなる極端な反露政策に突き進むことになるやも知れない。
これ以上はプーチン氏も抑えておくべきだろう。
来月の選挙を控えて、今月の最終日となる29日にプーチン氏は大統領年次教書演説を行う。
ロシア紙によれば、今後6年間以上の将来にわたるロシアの展望を彼は語ることになるらしい。
その中で今のウクライナとの紛争の帰趨について彼はどう触れるのか、改めて注目していきたい。