12月11~12日にウクライナのV.ゼレンスキー大統領は、J.バイデン米大統領や米議会関係者との会談を求めて訪米した。
目的は対ウクライナ支援継続の確約の取り付けにあった。しかし、多くのメディアが伝えるように、結果は不首尾に終わっている。
バイデン政権が、このままでは年内に支援財源が底をつくと危機感をいくら訴えても、米議会での対ウクライナ援助関連予算の審議は難航し、その成立は不透明な見通しの中に置かれたままだ。
法案審議で鍵を握る米下院議長がD.トランプ派に代わったこともあり、野党・共和党のバイデン政権への対決姿勢は従前以上に強まっている。
ウクライナより移民流入の方が問題
ウクライナへの援助継続より、流入移民規制の方が米国にとってより喫緊の課題だ、と彼らは主張する。
ウクライナ問題が最優先の座から滑り落ちた理由には、国内問題やイスラエル・ハマス紛争の余波に加えて、有権者たる米国民の対ウクライナ支援への熱意が冷めてきていることもあるのだろう。
最近の米国の世論調査では、対ウクライナ支援をやり過ぎと批判する向きが48%に達した。
調査の実施者が異なるものの、ロシア・ウクライナ紛争が始まってから3か月後の2022年5月には、この数値が20%だった。この変化を見れば、もう好い加減にしろ、の雰囲気が増していることは否めない。
勝ちが見えてこないなら、彼らへの援助は穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものではないのか、という疑いは広まるばかりだ。
背景や理由は多分に異なるものの、EUでも追加の対ウクライナ大型支援策が一加盟国の反対で年内に纏めることが叶わず、となった。
そして、先月に入ってから、以下のようにウクライナにとって不都合な報道が、いささか奇異に見えるほど急速に西側のメディアで増え始めた。
それは同国の重要度が米国をはじめとする西側で下がっていることの結果でもあり、原因でもあるのだろう。
戦局について、6月初め以来のウクライナ軍による反転攻勢が失敗だった、と皆が断じるようになった。
このような評価はすでに夏頃から一部では出始めてはいたものの、まだ状況打開への希望は捨てられていなかった。
しかし、ウクライナ軍総司令官のV.ザルージヌイ氏自身までもがそれを認めるような発言を行い、11月初めにその発言内容が英誌に掲載されてしまった。
そうなればもう歯止めは効かない。これを契機に一挙に「失敗した」という表現が転がり出す。
ゼレンスキー大統領は即座に、このザルージヌイ総司令官の発言を否定する見解を西側メディアで示した。
だが、その僅か1か月後には、反転攻勢で大きな成果が見込めていないことを、やはり西側メディアを通じて認めざるを得なくなっている。