実はこの屋根は、内側がお椀状になっており、その中に土を蓄えるスペースがある。木々のうち大きいものは樹高5mほどまで育つそうだ。
お椀状の屋根の下は暗がりとなり、厳かな斎場がかたちづくられる。その奥で静かな輝きを放っているのは、ファッションブランド・Mame Kurogouchiによる御帳(みとばり)と几帳。さらに、音響設計をサカナクションの山口一郎氏率いるNF、照明を面出薫氏のライティング プランナーズ アソシエーツが手掛けるなど、当代のトップクリエイターが結集した。
植栽を担当したのは、気鋭の造園家・齊藤太一氏のSOLSO。太宰府の豊かな生態系を踏まえ、60種類の植物を選んで植えた。天満宮の杜に多い常緑のクスノキをはじめ、季節を彩るサクラやモミジ、そしてなんといっても天神様を象徴する梅の木。大宰府に流された道真公を慕い、京から一夜で飛んできたという伝説の「飛梅」は、今も仮殿の右奥で白い花を咲かせる。
日本建築の伝統「生きている大屋根」を現代に翻案
設計者の藤本氏は「日本の伝統建築の特徴は、“生きている大屋根”だと思う」と語っている。
「太宰府天満宮の御本殿も、天然素材の檜皮(ひわだ)で葺かれ、朝靄に湯気を立ち上らせる。その生きている大屋根を、現代の建築に翻訳した。梅を飛ばせるほどの道真公ならば、宙に浮く森も喜んでくださるのではないかと考えた」
この発言は、投票期間中の2月4日にオンライン放送された「みんなの建築大賞2024に投票しよう!」(冒頭30分無料、配信2024年8月4日まで)でのもの。