1月25日、政府は能登半島地震に関する被災地支援のパッケージを公表した。今なお多くの被災者が避難所生活を余儀なくされており、道路などのインフラも迅速な復旧が待たれている。そうした中、自衛隊の大規模な支援活動に注目が集まっている。防衛省が支援活動を拡充するため最大100人の予備自衛官を召集する計画を示したところ、その枠を大幅に上回る400人以上から応募があった。この「予備自衛官」とは、いったいどのような制度なのか。「自衛官」との違いや、活動内容、報酬などを解説する。
(杉原健治:フリーライター)
予備自衛官は3種類
そもそも「自衛官」とは、平和を維持するために自衛隊に所属し活動する国家公務員だ。国の防衛のほか、大規模な自然災害や事故などでの人命救助、国際平和に関する活動などを担う。この自衛官の活動を有事の際に拡充できるよう、普段から予備役を確保しておく制度として「予備自衛官制度」が設けられている。
この予備自衛官には、役割に応じて「即応予備自衛官」「予備自衛官」「予備自衛官補」の3つの区分がある。いずれも自衛隊に所属する自衛官とは異なり、普段は会社員や学生など民間人として一般的な生活を送っているが、今回の地震のような有事の際に招集される非常勤の自衛官だ。
予備自衛官になるには、自衛隊での勤務経験がない人はまず「予備自衛官補」になるための試験に合格する必要がある。その試験には誰もが受けられる「一般」と、対象となる資格や能力を持つ人が受験資格を持つ「技能」の2種類の公募がある。ただし、採用年齢には制限があり、一般が18歳以上34歳未満、技能が18歳以上で、保有する技能に応じて53〜55歳未満となっている。技能の種類には、「衛生」「語学」「整備」「情報処理」「通信」「電気」「建設」といった区分があり、それぞれに医師、薬剤師、自動車整備士、システムアナリストといった対象資格が定められている。
試験に合格して予備自衛官補になっただけでは、まだ災害などの招集に応じることはできない。教育訓練を受けることで、晴れて「予備自衛官」になることができる。
教育訓練は、「一般」の場合は1回につき5日間の訓練を3年以内に50日間受ける。「技能」の場合は2年以内に10日間の訓練が必要だ。教育訓練を全て修了すると、その翌日に予備自衛官として任用される。
予備自衛官は招集に応じた際、現地で第一線部隊の駐屯地の警備や後方支援を行うのが主な任務だ。また、毎年5日間の訓練を受けることが義務付けられている。