31年間トヨタ自動車で広告宣伝・商品企画に携わり、2024年10月に著書『トヨタの戦い、日本の未来。本当の勝負は「EV化」ではなく「知能化」だ!』(集英社インターナショナル)を出版した髙田敦史氏。前編では、EVの本質は単なる電動化ではなく、「動く蓄電池」「動く部屋」など従来のエンジン車にはない価値の創造にあることを語ってもらった。後編では、中国の自動車産業の現実からトヨタへの提言、そして日本企業に求められる変革の本質まで、話を聞いた。(後編/全2回)
中国とどう付き合っていくべきか
──著書では中国製EVの台頭、それに対する各国の保護主義政策などについて触れられていますが、中国およびその周辺の動きについてどのように捉えてますか。
髙田 中国は、今後の自動車産業を考える上で避けて通れない存在です。特に欧州のメーカーにとって中国との向き合い方は死活問題となっています。例えば、フォルクスワーゲンは販売台数の4割を中国で占めているため、中国で売れなくなれば会社として壊滅的な打撃を受けることになります。日本車メーカーも欧州勢と比べると比率は低いものの、2~3割を中国で販売しているのが実情です。
つまり中国は、EVやPHEVを製造する強力な自動車会社を抱える国であり、世界中のクルマを購入する巨大市場でもあります。市場規模はすでにアメリカの倍近くまで成長しており、欧米や日本のメーカーにとっては「ライバルであり、市場でもある」存在です。
それ故、例えば、欧州が中国製EVの輸入に対して追加関税をかけた時、フォルクスワーゲンは「やめてほしい」と訴えました。中国から報復関税を受けた場合、大きな痛手を受けるからです。