1月16日、スイスで開催されたダボス会議で演説する中国の李強首相1月16日、スイスで開催されたダボス会議で演説する中国の李強首相(写真:AP/アフロ)

聴衆のしらけた表情

 その映像を見ていて、思わず目を疑った。これは、いかなるものの成れの果てだろう?

 1月16日午前、スイスの寒村ダボスで行われた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(通称「ダボス会議」)の開幕式。欧米の政財界のVIPたちを始め、1500人もの聴衆が集まった大広間の中央の壇上では、わざわざ遠く北京から駆けつけた、中国ナンバー2の李強首相が熱弁を振るっていた。

 だが、聴いているVIPたちの、しらけ切った表情と、疑心暗鬼の眼。習近平政権の外交を評して、「戦狼外交」(狼のように吠える外交)と言われるが、彼らは壇上中央の弁者を、まるで「狼少年」のように見ているようだった。

 思えば、いまから20年前、ダボス会議の最大の話題は、伸び盛りの中国経済だった。2001年末にWTO(世界貿易機関)に加入し、2008年北京オリンピックと2010年上海万博を控えた中国の経済は、どこまで伸び行くのだろう? それで、2004年から2006年までの予備的な北京フォーラムを経て、2007年から毎年9月に、中国(大連と天津で隔年)で「夏のダボス」を開催することにしたのだ。

 私は、2004年の北京フォーラムから2013年の大連での「夏のダボス」まで、10年連続で参加し、温家宝首相や李克強首相のスピーチを、会場で聴いてきた。あの時の欧米のVIPたちの期待と羨望の眼差しを生で体感しているだけに、ダボスの外の雪景色のように冷え切った李強首相の演説風景に、驚きいってしまったのだ。