- 1月13日の台湾総統選は与党民進党の頼清徳・蕭美琴ペアが勝利したものの、第一党の座を国民党に明け渡し立法院(国会)は「ねじれ」状態となった。
- だが、3人の候補者はいずれも台湾アイデンティティを持つ台湾人候補で、争点に「一つの中国」は持ち出されず、台湾の独立を守る「民主主義」に希望が見えた。
- 今後、中国はねじれ状態につけ込むなど、あの手この手で恫喝を強化してきそうだ。日本を含むアジア太平洋民主主義国家は、中国を牽制し台湾への協力を進める必要がある。
(福島 香織:ジャーナリスト)
世界が注目した台湾総統選挙は1月13日無事に終わり、与党民進党の頼清徳候補が次期総統として当選した。だがその勝利は圧勝というよりも、逃げ切り型の小さな勝利であり、同日の立法院(国会)選挙の結果、与党民進党は大幅に議席を減らし113議席中51議席しか取れず、第一党は52議席を獲得した国民党に譲ってしまった。
恐るべきは第3の党、民衆党の躍進だ。8議席を確保して、国会のキャスティングボートを握った。当初、泡沫化するのではないかと言われた民衆党は総統選では柯文哲候補らが26.46%の得票率。政党票でも22.07%の得票率。一方で、ひまわり学生運動(2014年)参加者から生まれた政党で2016年立法委員選挙で5議席を獲得して話題になった時代力量は度重なるスキャンダルで完全に支持を失い、政党票は3%を下回り、議席を失った。かつて時代力量の創設メンバーで主席を務めた黄国昌は今回、民衆党から立候補し立法委員に当選している。
こうした選挙結果によって、台湾の政治は今後どのような道を歩むのか、そして国際社会はそれをどう受け止めるのかについて、少し考えてみたい。
私は13日の投開票日を民進党総選挙本部前で迎えた。支持者たちは開票1時間も経たぬうちに頼清徳・蕭美琴ペアの勝利を確信し歓喜に沸いていた。だが勝利を決めて国際記者会見場に現れた頼清徳の表情は歓びに輝いているというよりは、やや緊張の面持ちだった。副総統としては、総統当選の喜びよりも「立法委員選挙の敗北」の責任を感じているようでもあった。
だが私は今回の選挙はあらゆる角度から、ポジティブな意味で台湾選挙史に残る素晴らしい選挙であったと肯定したい。
まず4つの歴史的意義があった。