- 総統選を終えた台湾に対する中国の恫喝(どうかつ)が表面化し始めた。1月15日、上海地方局の討論番組におけるタカ派軍人論客の発言がチャイナウォッチャーの間で注目を集めた。
- 中国・習近平国家主席の「代弁者」とみられる人物が、「台湾との戦争を恐れず」「南シナ・東シナ海では必ず勝利する」などと発言。台湾の世論を動かそうと「認知戦」を仕掛けているとの見方がある。
- 米国では予測不能のトランプ氏が大統領に再選される可能性も高まっており、中国と不測の事態が起きかねない。最悪のシナリオを想定したリスクへの備えが必要だ。(JBpress)
(福島 香織:ジャーナリスト)
台湾総統選が円満に終了し、中国・習近平国家主席が最も嫌う自称「実務的台湾独立工作者」の頼清徳が総統に選ばれた。5月20日に就任式が予定され、8年続いた民進党政権はさらに4年、計12年続くことになる。この状況を習近平は果たして黙って見ているだけなのか。
世界が中国の出方を見守る中で、1月15日の上海東方衛視の討論番組「これぞ中国(这就是中国)」が、チャイナウォッチャーたちの間でちょっと話題になった。タカ派軍人論客で知られる羅援退役少将と復旦大学中国研究院の張維為院長が番組中、はっきり「最悪の心づもり(最壊的打算)」に言及したからだ。彼らは「最悪の心づもり」で、何をしようというのだろうか。
この番組のテーマは「高波の海における中国国防の自信」。羅援は番組の冒頭の解説の中でこう語っていた。
「戦争には大戦、中戦、小戦と3つがある。(中略)中戦とは、台湾解放戦争だ。この種の戦争は中国と外敵、それぞれに優劣があろう。しかし、中国は天の時、知の利、人の和において優勢だ」
「最近、域外の覇権国家が頻繁に中国のボトムライン(越えてはならぬ一線)を挑発してくる。バイデン米大統領は去年に日本に訪問した時、公然と台湾防衛について語った。これは米国歴代政府があえて口にしてこなかったテーマだが、バイデンはこの曖昧(あいまい)にしていた政策を明晰(めいせき)化してしまった。ペロシ元下院議長の訪台、ポンペオ元国務長官の訪台などすべてがすでに中米国交樹立の三原則を深刻に踏みにじっている」
「このことから、我々は高らかに中国の法律の旗印を掲げる必要があると思う。つまり、中華人民共和国憲法、これが定める台湾問題の定義とはなにか? 第1に、世界に中国は1つ、第2に中華人民共和国が唯一の合法的な代表、第3に台湾は中国の不可分な一部」
「台湾は中国の1つの省なのだ。なのに、なぜいわゆる『総統』がいる? なぜ『行政院』『立法院』が設置されている? これは全て違法だ。中国人民解放軍は一切の代償を惜しまず、国家の主権と領土の完全性を防衛するのだ!」
「私はあえて米国人に問いたい、あなた方は一切の代償を惜しまずに、あえて台湾に防衛協力するのか? 最も明らかな例として、ロシアはクリミアを取り戻したとき、米国をはじめとするNATO(北大西洋条約機構)とロシアは陸続きであるという便利な条件であっても、あえて武力行使しなかった。いったん、中国が我々の権利を行使して、必要な手段で台湾を取り戻したとして、米国が遠くまで来て、太平洋をまたぐ作戦をして、我々と勝算のない戦いをするだろうか? 米国にそんな度胸はないと思う」
さらに円卓討論コーナーで羅援はこう語る。