(英エコノミスト誌 2024年1月13日号)
西側の政治家が次の「チャイナ・ショック」に備えるべき理由
中国の政治指導者たちはリチウムイオン電池や電気自動車(EV)、太陽光発電パネルのことで頭がいっぱいになっている。こうした種類のテクノロジーが将来「経済の柱」になると習近平国家主席が明言した。
習氏は確実にそうなるように多額の資金を投じている。つまり、数年後には同氏の野心が世界中で感じられるということだ。
これでは製品輸出ブームが起きて貿易戦争に発展しかねない。
不動産不振に苦しむ中国経済
習氏の製造業への入れ込みぶりは、中国の経済成長の足を引っ張っている不動産業界の不振を打ち消す必要があることで説明できる。
不動産開発業者上位100社の売上高合計は2023年に17%減少し、居住用不動産への投資総額は8%減った。
ここ10年間は不動産投資の伸び率が経済成長率を上回っていたことから、政府当局は不動産の不振を製造業がカバーしてくれることを期待している。
中国企業が主たる資金調達源としている国有銀行は、事業会社に現金を流し込んでいる。
有力な省の輸出業者は、パンデミックの際に講じられた税制優遇措置の延長やグリーン産業部門のカーブアウト(事業の一部を切り離して独立させること)を認める見返りに、生産量を増やすよう命じられている。
2023年の1月から11月までの間に実行された金属精錬設備への投資の額は、前年同期の実績を10%上回った。
同じ時期に自動車製造設備では18%、電気機器製造設備では34%、それぞれ投資額が増えている。
このような展開を目の当たりにして、西側諸国のベテラン政策立案者たちは昔を思い出すことだろう。
中国の台頭は、グローバル貿易における未曽有の変化を伴った。2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟すると、その後の10年間で中国の輸出は460%以上増えた。
おかげで化学、金属、繊維などの分野でダンピング――外国での販売価格を国内より低くすること、不当廉売――をしているとの批判を最も激しく受けることになった。
品物を安く買えることは消費者にとっては朗報だが、裕福な国々の一部の工業労働者にとってはそうでもない。
やがて、影響を受けた業界でレイオフが始まると「チャイナ・ショック」と呼ばれるようになり、2016年の米大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利に貢献したとして非難することが流行した。