(英エコノミスト誌 2024年1月6日号)
ジョー・バイデン氏以外に目を向けられないことで、民主党は臆病さと慢心を見せている。
米国政治はグランド・キャニオン並みの巨大な矛盾のせいでマヒ状態に陥っている。
民主党は、ドナルド・トランプ氏が大統領に再度選ばれたらこの国の民主主義は終わってしまうと大騒ぎしている。
それなのに、11月の本選挙で誰をトランプ氏にぶつけるかを決める際には、大統領の任期のこの段階での支持率が近代のどの大統領よりも低い81歳の現職の立候補をおとなしく認めることになりそうだ。
なぜこのようなことになってしまったのか。
近代の米国大統領で最も低い支持率
バイデン氏の支持率から不支持率を引いたネットの支持率は現在マイナス16%。
片やトランプ氏は勝敗を大きく左右する「スイングステート(激戦州)」での世論調査でリードしており、再選までの道のりは遠くない。
トランプ氏が独裁者になる恐れはないと考えたとしても、この見通しには不安を禁じ得ない。
民主党の大部分は、できたらバイデン氏には出馬しないでほしいと思っている。
だが、バイデン氏に立ち向かうことも同氏を精力的に支援することもせず、ただ漫然と、自分たちが置かれた悲惨な状況について不満をこぼしてばかりいる。
バイデン氏がこれほどまでに不人気な理由ははっきりしている。その一つは、同氏のせいだとされたインフレが続いていることにある。
その次に来るのが年齢だ。ほとんどの米国民には、高齢ゆえの衰えを見せ始めている80歳代の知り合いがいる。
いくら優れた人格者であろうとも、世界で最も困難な仕事に4年間も就かせるべきではないということも分かっている。
バイデン大統領は1期4年での勇退を2023年のうちに決断できたし、そうすべきだった。
そうしていれば公職の鑑として、そしてトランプ氏の際限のないエゴに対するアンチテーゼとして崇められたことだろう。
このことは、民主党の実力者たちも承知している。
実際、民主党が中間選挙で予想以上の成績を収める前には、多くの党員がバイデン氏は恐らく身を引くと思っていた。
本誌エコノミストは1年以上前に、大統領は再選を目指すべきでないと論じていた。