今年は紫式部で攻めるNHK(写真:西村尚己/アフロ)
  • 20代、30代の女性をターゲットに定めるNHK。ヒット作「大奥」の二匹目のドジョウとして狙うのが『源氏物語』の作者、紫式部の生涯を描いた大河ドラマ「光る君へ」である。
  • もっとも、天皇家のタブー「この子ダレの子」疑惑に切り込んだ『源氏物語』は、おじさんにはどきりとする問題作だ。
  • 男女間に横たわる永遠の疑惑を描く野心的な物語になるか、または男の権力争いを女の冷ややかな目線で描くのか、それとも昨今のジェンダー平等キャンペーンの一環でとりあえず女主人公を据えただけで終わるのか。

(若月 澪子:フリーライター)

 今年の大河ドラマは、これまでの大河ドラマ史上、異例な作品である。『源氏物語』の作者、紫式部の生涯を描くというのだ。

 大河ドラマはもともと歴史好きおじさんのためのコンテンツ。ところが昨今の若者のテレビ離れを懸念したNHKが、メインターゲットに定めたのが女性。しかも、20~30代という若めの女性たちである。

 若い女性に支持されないメディアに未来はない。彼女たちにも看板商品の大河ドラマを見てもらわなければ……。その布石として最近NHKが頑張っていたのが、男女逆転を描いたドラマ「大奥」。それは見事にヒット作となった。

 その次の作品として挙がったのが、有名だが、本名も生没年も不詳、わからないことだらけの紫式部である。彼女を主役にする大博打に打って出る。

 この大河、おじさんとの相性はマジでよくなさそう。そもそも紫式部の『源氏物語』は、世のおじさんにとって、とんでもねえ問題作だ。

『源氏物語』の何が問題か。

 世界中の父親が、わが子の顔を見て一度は感じるあの疑惑。「この子ダレの子、本当にオレの子?」疑惑を真正面から描いている作品だからだ。しかも、この問題が、日本で一番起こってはならない天皇家での疑惑なのだから話は深刻である。

『源氏物語』の舞台は、平安時代の日本の後宮(ハレム)である。