産業用ロボットを設計・製造する企業で働き始めたBさんだったが……(提供:tetola/イメージマート)

 低賃金、やりがい搾取で働く人を追い詰めるブラックな職場。その一方で、ムダで無意味なうえに有害、なのにしっかり給料がもらえる「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」が存在する。今やホワイトカラーの半分以上が「クソどうでもいい仕事」ではないかという疑惑さえある。日本にはどのようなブルシット・ジョブがあるのか。現場からの告発をリポートする。(若月 澪子:フリーライター)

※「クリスマスには何の予定もありません!」というおじさん、すべての働く人に捧げるジングル・ベル! 若月澪子さんの新刊『副業おじさん 傷だらけの俺達に明日はあるか』(朝日新聞出版)、ただいま好評発売中!

データ捏造を指示されたエンジニアの運命

 ダイハツ工業が30年以上にわたり不正を行っていたことが発覚、全車両の出荷停止が発表された。不正なデータを使って国から「安全のお墨付き」を得ていたのだという。

 こうした現場には、失敗作の体裁を整え、それらしく見せるためのデータの捏造や改ざんをする、もしくはさせられる人たちがいる。

 彼らがそれを進んでやっているならただの「悪人」だが、もし良心の呵責に苛まれているなら、それは恐ろしいほど無意味で有害な「クソどうでもいい仕事」になる。

 そして、こういった仕事は「クソどうでもいい仕事」の中でも、「尻拭い」というカテゴリーに分類されるものだ。実際に、上司の尻拭いの果てにメンタルを壊したエンジニアもいる(※ダイハツではない)。

 尻拭いとは、人の撒き散らしたクソを周りが片付ける仕事。すなわち人の失敗や不祥事を当人に代わって処理することを指す。「テメエのケツはテメエで拭け」という状況なのに、なぜか他人がケツを拭くハメになる、まさに「クソどうでもいい仕事」だ。

「自分の仕事は、ただの尻拭いだった」

 そう話すのは中部地方に暮らすBさん(30代前半)。一体、誰が撒き散らしたクソなのか。

「メインは四角い顔のおじさんですかね。あとは勇ましいハゲもかな。もとをたどれば入社式で見た老害と呼ばれる80代のおじいさん……。あ、これはウチの会社の会長ですね」

 遠い目をして、過ぎし日のおじさんたちのクソな思い出を振り返るBさん。

 彼は1年前まで、創業50年を超える、東証プライム企業の開発部門に所属するエンジニアだった。

「一般には有名な会社ではありませんが、誰もが知る大企業の工場で使用する産業ロボットを設計・製造している企業です」

 理工系の大学院を卒業し、希望していた開発部に配属されたBさんは、野心に燃える青年だった。

「開発に没頭して、会社でどんどん出世していこうという、やる気のある社員でしたね。自分で言うのもナンですが、今どき珍しいタイプの若者でした(笑)」

 ところが、Bさんは「クソどうでもいい仕事」のせいで退職に追い込まれ、今は実家暮らしでほぼ無職。一体、どのような「尻拭い」がBさんの運命を変えたのだろうか。

【関連記事】
「新規事業開発部」という名の迷宮、なぜブルシット・ジョブが生まれるのか?