幕府の役人は忌引が50日・産休も7日あった?
本書では、江戸幕府で働く人たちの勤務条件をまとめた第6章も興味深い。たとえば老中の勤務時間は朝10時~15時くらいまで。江戸城から近いところに「役屋敷」という公邸を与えられていた。幕府の役人たちは、基本的に残業はないが、繁忙期には1カ月休みなしで働くこともあったという。
また武家社会では死穢・血穢(しえ・けつえ)の文化(家族・親族の死に接した場合の外出規制)があった。そのため父母が亡くなった場合は忌引が50日間あり、妻が出産した場合は産穢(さんえ・血穢の一種)と呼ばれ産後7日間は出勤できなかった。現代と趣旨は異なるものの、産穢は男性の育児休暇のようだと戸森氏は語る。
不満のまったくない職場など江戸時代も現代もきっとないだろう。しかし江戸時代の人々は自分に与えられた仕事を全うして生きていたのだろうということがわかる。身分制度がない現代。我々も己のやるべきことを見極め、仕事や人生を切り拓いていかなければならないと思わせてくれる書籍だった。