『葬送のフリーレン』12巻(小学館)、『ダンジョン飯』15巻(KADAKAWA)それぞれの表紙より

(歴史家:乃至政彦)

エルフとは何か?

 西洋風ファンタジー作品には、「エルフ(Elf)」という、人間ではない人型の妖精が登場する。

 最近は、これまでファンタジーものに関心のなかった人たちも、日本の漫画『葬送のフリーレン』や『ダンジョン飯』を介して、エルフという存在を知るようになっているとも聞く。

 そこで、エルフとは何かを簡単に説明してみたいと思う。

典型的なエルフ像

 現在のファンタジー世界におけるエルフについて、およそ共通する6つの特徴を挙げておく。

①容姿端麗で、華奢な体つきを持つ。耳が尖っていて、髭は生えない。

②魔法が得意で、頭脳明晰である。

③ドワーフ(白雪姫に登場する小人。闇の妖怪とも)、ホビット(呼び名は作品世界によって様々。愛嬌ある小人)など人型の種族の中でも長寿で、数百年は生きる。

④人間には比較的好意的で、生殖も可能。ドワーフとは争いがち。

⑤森に住み、弓矢と軽い剣、軽い防具を好む。

⑥人口はかなり少なく、人間のように都市を持たない。

 これだけ理解しておけば、エルフについて大体間違うことはない。

 ただ、注意しておきたいのは、エルフはほとんどフリー素材なので、「公式」のルールなどないことだ。

 なぜならこうしたエルフ像は、ヨーロッパの伝承や神話を使って創作されたトールキンの小説『指輪物語』(初版1937年。または同年の『ホビットの冒険』)から広がり、これをTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(初版1974年)がゲーム的に再構築したことで定着したもので、そこからさらに「私たちの考えたエルフ」がたくさん作られていった。